座談会 インターモーダルとITS(No.15)
情報提供とサードパーティ



○荻野 さっきお聞きしていてちょっと思ったんですけど、我々は「案内する」というのをかなり目玉にしてサイバーレールというあれをしたんですけど、当然、自動車の場合はGPSもあるわけですし、カーナビもあるわけですから、いわゆるディマンドを渡したら、今の交通状況から見ていろいろ案内したりとか、都合のいいように振らせることは可能だろうと思うんです。それはITSの中では検討されているんでしょうか。

○赤羽委員長 交通管理に使うことを、研究しています。問題なのは、システムオプティマムとユーザーオプティマムとが、必ずしも一致しないということです。道路システムとして最適な車の動かし方をすると、ある特定の個人はもっと所要時間が短い経路があるのに全体のために遠回りをさせられるというケースが発生するんですよ。そんな目に遭うために、例えばVICS対応のカーナビを買う人がいるとは思えません。

○荻野 我々のときは余りそれはないかと思うんですけれども、いわゆる機械の言うとおりに動かされるなんて嫌だという言い方もありますよね。それはどういう議論を。

○赤羽委員長 基本的には、情報は提供されるのですけれど、選択権はユーザーにあるんですよね。得られた情報をどう使うかというのは、やはりユーザーが決めるのでしょう。

○荻野 僕らが考えたときは、やはり旅行者の動きをフォローしていますからどこへ行ったかわかるので、言うことを聞かなかったというか、例えば、寝てしまって乗り過ごしたこととかありますよね。そういう回復も含めてやるわけなんですけれども、ただ、やはり全体のためにはというようなことが必要なこともあるんでしょうね。

○赤羽委員長 ありますよね、場合によっては。

○荻野 ですよね、幾ら個人の何とかと言っても。

○赤羽委員長 道路交通の分野で言われているのは、例えば大きな地震が起こったときに緊急輸送路を確保するとか、救急救命活動を優先させるとかいうようなとき、それは明らかにシステム全体としての最適化が容認される状況ですよね。そういう状況で適切な交通管理をするためにも、普段から使いなれている双方向通信システムこそが、重要なんですね。

○荻野 ということは、今のところVICSにしても何にしても、いわゆるコントロールはしない、あくまでも情報を提供するにすぎないということになるわけですね。

○赤羽委員長 現在運用されているシステムは、情報提供だけです。VICSで提供される情報は、どこを先頭に何kmぐらい渋滞しているとか、それぞれの道路区間を通過するのに何分かかっているのかというようなものですね。そのぶつ切りの情報をカーナビで再構成して、現在地から目的地までそれぞれのルートで何分かかるか計算するようなシステムです。

 そうではなくて、道路網全体のことを考えてセンター側で最適な経路を計算し、その情報をユーザーに返してやるというような思想もあります。Centrally Determined Route Guidance(CDRG)と言います。それに対して今やっているのはLocally Determined Route Guidance(LDRG)ですね。その2つの発想が当然出てきますよね。そのあたりをどういうふうにバランスさせるか。多分、CDRGの方は、どちらかというと限定された地域で、限定された時間帯とか場合で使われるのではないかなと考えています。

○荻野 鉄道の場合は案内をするときに、車椅子の方とか視覚障害者の方とか、そういう方のための案内が今、ちゃんとできていないわけなんですよ。乗り換え案内でも、今の市販の乗り換え案内は単に乗り換えだけですから、車椅子を使っていてもどこの駅だったらちゃんと乗り換えられるとか、どこどこだったら大変だとか、そういうふうな案内システムがないんですけど……

○赤羽委員長 そういう情報、例えば鉄道のことだったら鉄道側がすべて整備しなければならないとは限りません。例えば、ハンディキャップを持っている人たちが実際に移動してみて、ここはスムーズに移動できたとか、そういう情報を簡単に電子化できて、ウェブサイトにアップロードしてほかの人たちとも共有できるというような仕組みだって、今は可能ですよね。

○荻野 おっしゃるとおり、そういう方たちが情報を集めてものもあるみたいです。ただ、まさにそういう方向もやらないと、先ほどの話じゃないですけれども、プルだけじゃなくてプッシュしてくれない。ちょっとニュアンスが違うんですけど、情報ボランティアが出すようなものをうまく使わないと、全部お金を払ってそういうシステムをやっていったら、ちょっと大変ですものね。

○赤羽委員長 むしろそういう活動を鉄道の側がバックアップしてくれるとか、そうやって集まった情報をうまく鉄道の側でも取り込んでくれるとか、柔軟な姿勢の方が現実的じゃないかと思うんですけど。

 サードパーティに期待した方がいいのではないかという話もあるんですけども、ではそのために、例えば道路だったら道路管理者、交通管理者が持っている情報がどういう形でオープンにされたらいいか、鉄道事業者が持っている情報がどういうふうにオープンにされたら、そういう活用がしやすいのかといった問題については、どうお考えですか。
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