座談会 インターモーダルとITS(No.18)
情報公開とビジネスモデル



○赤羽委員長 今までは行政が持っているデータがオープンになっていなかったのですが、相当本格的な枠組みでオープンにするという議論を今していますので、非常に近い将来にそれが現実化すると思います。ただ、問題はどういう形でオープンになるかということ。つまりフォーマットとかデータ仕様がどうなるかですね。

○羽藤 それにセンスがあるかどうかではないでしょうか。センスがあれば、前々から言っているようにインターオペラビリティが確保されていれば全然問題ないと思います。逆にセンスがないようだと、問題がある。

○赤羽委員長 はっきり言って、何をオープンにするかという話し合いは出ていますけれども、どういう形でというところは余り具体的に議論していない。でも、そこが肝心でしょうね。オープンになっても、みんなが使いにくい形態ではなかなか活用されないですね。

○羽藤 ニワトリが先か卵が先かわからないけれども、要するに、サービスの方で非常に魅力的なベースモデルがあったときには、それを前提にデータベースをどうするかみたいなことは割と考えやすいですよね。ただ、データベースがないとそういうものも出てこないし、ビジネスモデルがないとそういうものが出てこないというのはあるんで、何かどちらかで、それはひょっとしたら、やっぱりビジネスモデルの方が先かもしれないですね。
 今のところ、果たして交通情報でうまく成功したビジネスモデルがあるかというと、やや疑問です。だから、むしろちょっと遊びの入ったようなビジネスモデルであれば、僕はそういうものをきっかけにしていろいろ変わっていく可能性があるんじゃないかなと思うんですけれども。

○本多 どちらが先にしろ一足飛びには行かないでしょう。官側の情報をオープンにしてくれるといっても、初めは何でも使えるような美しい形では絶対に出て来ないですから。
 そうは言っても、一般向けのビジネスじゃないですけれども、自分たちの内部で情報をいかに使い回そうかと官側でも考えますよね。官の内部の情報の共有だとか効率化というのを今、国はどんどん求められていますから、そこはそれなりにだんだんよくなってくるんじゃないかという期待は、少しはしてもいいんじゃないかという気がします。

○羽藤 この討議の仕切りの中で、動機づけという話がありましたが、この委員会の一番最初に情報の価値の話をしたときに、一番の価値として不確実性を減らすという話が出ました。もちろん、社会的な便益で旅行時間を減らす、渋滞改善というのがあるんだけど、不確実性を減らすという話が出ましたよね。これは僕は重要なことだと思っているんです。
 なぜかというと、例えばA地点からB地点へ行くのに今50分かかっている。新しいバイパス道路をつくると40分で行けますと。でも、情報提供がなされていなかったら、40分だけどプラス・マイナス10分とかプラス・マイナス5分とか思いますよね。そのときに、道路をつくらなくても本当に正確にジャスト50分で着きますよという情報提供がなされていたら、そのことの価値と新しい道路をつくることの価値というのは果たしてどちらが高いのかって考えると、交通情報提供はすごく重要だという話です。
道路建設などのインフラ投資というのは確かに旅行時間の改善にはすごく寄与してきたんだけれども、そういう投資よりも、ひょっとしたら情報提供の方が社会的な便益、要するに旅行時間の低減、不確実性の低減に価値があるんじゃないかもしれません。
 鉄道の場合、荻野さんの話で印象的だったのは、最初にソフトを考えるとおっしゃいましたよね。ソフトでこうこうこうやって、どうしてもだめだったときにハードを考えると。我々と逆ですよね。我々はハード、道路をとにかくつくっていって、それを補完する手段として情報提供を考えている。でも、知識情報化社会になってくるということは、むしろ情報の側、バーチャルな空間の方でどういうふうにインフラを整備するのか、それを荻野さんはサイバーレールとおっしゃっているし、僕はバーチャルトランスポートみたいなことを思っているんですけど、そういうところで、バーチャルトランスポートの中でインフラをどう整備するかということの方が重要なんじゃないかなという気がしますね。

○赤羽委員長 どっちが重要だというのではなく、対でないとうまく使えないということでしょうね。

○羽藤 本当はそうなんですけど、我々の方では、道路の整備に偏りすぎている印象があります。

○赤羽委員長 今まではそうだったかもしれないですね
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