Re:Re3: 限定合理性に基づく行動モデルが必要?

by Takashi Akamatsu Date: Sun, 04 Apr 1999 10:26:46

赤松@豊橋技術科学大学です.

羽藤さん,丁寧なご返事ありがとうございます.羽藤さんの "しかし、 ここで重要なことは、....." の意見,面白いと思います.

以下は,羽藤さんへの部分的な回答(回答・コメントしていない部分 については,またボチボチ議論できればと思います)と前回で書いた ことの補足です.回答に相当する文章は,注釈部にも分散して書かれ ています.書いているうちに,ちょっと長くなってしまったので(今, 自分で読直してみると, 一般論としては皆様ご存知であろう当たり前 のことまでクドく書きすぎた気がするので,サラっと読み流してくだ さい),お忙しい方は,読むのを後回しにして頂いて結構です.

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(まず,念のための確認ですが...)

もし,前回私が書いたことが, "情報提供なんて全く"価値"/"効果" が無いんじゃないの?" とか,"利用者の行動予測なんて無理だから 無駄" とかいうことを私が言っている(or 言おうとしている)と読 めたのでしたら,それは(私の書き方が下手なことによる)誤解です.

私は,まずは,情報提供で確実に効果(*1)があがる場合,かえって 悪くする場合,そして,(現状では)*全く不明* の場合 に分類で きるだろう(あるいは分類すべき)と考えています(もう少し細か く分類した方が良いかもしれませんが,とりあえずの分類).

で,これらの場合を,道路条件(代替ルート・パターン,容量条件等), 道路状態(渋滞パターン等),情報提供の方法,利用者の割合等の要因 をもとに,ある程度うまく(*3)仕分けができないものかなア(言うは 易し,行うは難しですが..)と考えていて,先の mail でゾロゾロ と順番に疑問を並べてみたのです...たぶん,この説明では,何故, 先の mail の疑問・議論項目なのか?ということに対して,たぶん舌 足らずですので,もう少し書いておきますと....

何らかの投資による効果の計測をしたい場合,基本的には(個々人 レベルではなく)投資の影響する*システム全体*の状態がある程度 予測できなければ話になりません.ところが,個々の利用者の行動 (原則)はある程度予測できたとしても,システムの状態は全く予測 できない(さらに言えば, 道路システム全体の利用効率面から望ま しくない状態にも"ランダム"に遷移しうる)ことが実際に起こりう ると言われています(*4).その様な場合に,さらに,情報提供シス テムの影響が入ると,本当に "わけの判らない" 状態となる可能性 が大でしょう.

もしこれが頻繁に起こるのであれば,そのような "わけの判らない" 状態に対して(意味不明になるであろう)"価値"/"便益"の計測を しても徒労ですから(価値計測自体は,交通管理計画や情報提供主 体の最終目的ではありませんし..),まず,上記のようなことが 頻繁に起こりうるのか? どのような条件で起こりやすいのか? どのようなメカニズムで起こるのか? 所要時間に対する影響で見 て本当に事態が深刻になる場合は?等を,ある程度,クリアにして ..,そして,どうすべきか?(eg. 情報提供法自体を何らかの上 手い方法に修正すべきか? 他の交通管理手段との併用策を考える べきでは? etc.)といったことを考えることが大事だと思います.

(で,このmailing list のパネリストの中にも似たことをお考え の方がきっとおられるでしょうから,そのような方向の議論もある と嬉しいなアと思って,先のmailになったのですが...この M.L. の名前から判断すると,そういう議論は,このM.L.の設立目的とは, はずれてしまうかな? 私は,曲がりなりにも(?),工学屋なので, ついつい,こういう方向で考えてしまいましたが...)

従って,私も, 羽藤さんが書かれているような"旅行時間の変動"や "交通情報(所要時間)の精度(*6)"に興味があるという点では希望 は一致します.が,それだけではなく,(極端な例で言えば, 状況 ・原因を抜きにしたり,色々なケースをごっちゃにして "所要時間 の変動はこれくらいだ" とかいうのではなく)上記の様な状態・場 合等の仕分けにつながるような情報・議論・意見があると嬉しいです.

(このような面倒な希望を無責任に書くと, 気軽に意見を言い難く してしまってマズイでしょうか,森川さん? でも,せっかく, こういうことの実状にも詳しそうな交通工学の専門家の方が何人も パネリストにおられるのですから...)

P.S. また,クドくて長い messageになってしまいました.皆様すみ ません[でも,こういう長ったらしい文章は,今後とも,週末(かつ, 妻から開放許可の出た日)くらいしか書かないつもりですし,何でも "噛みつく"とかいうつもりも毛頭ありませんので,ご安心ください].

(*1) 所要時間の期待値が下がったという意味の効果,分散が小さく なったという意味の効果等の個別効果,あるいは,(リスク・プレミ アムを考慮した)その総合効果のいずれの意味でもかまいませんが, 羽藤さん(森川さんも?)と私の間には,どうも,用語の食違いが あるらしいことに(今さらながら)気づきました:羽藤さんは,交通 情報システム/サービスの "価値"/"便益"/"効果"という言葉を, _情報利用者の感じる価値_のみ(or に重きを置いた)の意味で使われ ているようです(例えば,羽藤さんの文中の "交通情報サービスの 価値を量る上で重要でしょうし、この議論をして情報に価値がないよう なら、交通情報サービス会社なんてやっていけない..." ).一方, 私は,_道路システム全体での総便益_に重きを置いた意味で使ってい ます(*2).さらに言えば, もし,効果・便益を(計測可能な場合) 議論するなら,個々の利用者レベルのみで見た効果vs道路システム全体 での効果とか,空間的な局所レベルvs大域レベルでの効果の各々の効果 等(*2)の区別を意識的に明確にした方が良いと考えています.

(*2) 言うまでもありませんが,混雑等による"外部不経済"がある場合, 個と全体,あるいは,局所と大域の効果の改善方向は必ずしも一致 しません(この gapをできるだけ埋める(あるいは広げない)方法を 考えることは,交通システム管理者,交通エンジニア,交通研究者の 大事な仕事です).

(*3) もちろん,完全にできるわけはなくて,これが処方箋とともに 完全に体系化できたら,学位論文が何本もかけると思います.

(*4) これは,羽藤さんの書かれた問題例も含まれますが, 頭の痛い 本当の問題は,もう少し複雑です.例えば, U.C.Berkeleyの Carlos Daganzo教授 (最近のTransportation Science に載っています)が, 渋滞が非常にひどくなった状態(eg.延伸待ち行列が高速道路ランプ 出入口や上流交差点を完全にふさいでしまう場合)に,利用者の経路 選択が加わった場合,初期状態や撹乱現象に対して状態変化が極めて sensitive になる問題を簡単な例で議論しています(i.e.羽藤さんの 例は, 情報システムがあったときの問題ですが, それなしですら, 道路システム自体の状態に予測不可能性が生じることがある(*5)).

(*5) こういう場合は, (提供情報利用者の行動自体が経験等によって 安定していても)所要時間の分散自体が安定していない可能性があり ます.そうすると,結構厄介で,現在や過去のデータだけを見て,本当 の"不確実性" 減少効果や将来の効果を計測することは難しいのでは ないかと思います.

(*6) 細かな質問ですが, 羽藤さんが言われる "所要時間の精度" とは, 実際の経験旅行時間と現在旅行時間(システムが情報提供する旅行時間) の相違を確率変数と考えた時の期待値の大きさ,それとも分散の大きさ? それとも別の意味(例えば,両方を確率変数と見たときの2つの確率 分布の"近さ")?

この意見に関しての意見は jste@super.win.ne.jp へお寄せ下さい。


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