1 交通情報の収益性とキラーコンテンツ探し

○倉沢 私は実際の仕事の中で,マルチメディアのコンテンツで我々が思いもつかないようなものがまだあるかどうか,いろいろと考えさせられていますが,車で目的地までの行動における「車の情報化」に関して,(WHATの部分で)見たことも考えたこともないような情報のメニューはもう無くて,むしろ求められている状況での「情報の出し方の問題」の方が本質だと思っています.
 それまで警察が流していた交通情報は,情報内容を編集してはいけないが,同じ内容を別形式にしてもいい,という規制緩和でATIS注(2)のような第3セクターが出来ました.今後交通情報に幾つか付加価値をつけるような議論がもう少しされながら規制緩和の度合いが決まるでしょうが,メディアビジネスとして交通情報というコンテンツが成り立つかが重要です.今のラジオの交通情報では道路交通情報センター注(3)の情報を流すだけですが,今後は「この先そこが混雑しているからこのような活動をしてはどうでしょう」とか,「こちら側は空いていて順調なので,こういう寄り道をしてみてはどうでしょう」というように,格好よく言えばプロデュースしてあげることが必要だと考えています.ありきたりの言葉ですが,「気の利いたコンテンツ」を考えて,それをつくるためのメディアビジネススキームを作る,ということです.そういう情報を付加するための採算,あるいはその放送局あるいは発信局の体制などを,収入規模に視点を置いて議論する必要があります.
 収入源を,だれから,いつ,いくら払ってもらうかという考え方の中で,あるいは情報を得ることでメリットのある視聴者・利用者以外の人にお金を払わせるような広告的な仕組みがあり得るかもしれない.今でも「ラジオ」という情報を受ける端末は既に車に全部ついていますし,いつか携帯電話もつくでしょう.どのような端末を買えばどのような情報が受信できるか,あるいはサービス加入費云々の面倒くささや,どこかにわざわざ取りつけに出かけなければいけない面倒くささをクリアする必要があります.突き詰めれば車載標準であったり,買えば自動的にi-modeがついている携帯電話のようなことは,収入規模を考える上で重要です.
 支出に関しては,情報を発信するインフラはさておき,情報を集めてくる設備をどうするかが問題です.もちろん番組調達の費用も重要です.例えばお土産物屋で「今日は大根が特売だ」といった情報を誰が拾ってくるか,どういう方法で拾ってくるか,ということをきちんと詰めないと,アイデアとしてはおもしろくてもメディアビジネスとして成り立ちません.そういう意味での情報を集める活動,広告であれば営業活動,あるいは情報収集活動,取材活動というべきものの支出規模が問題になるでしょう.また利用者サイドから見た競合メディア,つまりラジオか,友達に携帯電話をかけるか,観光案内所に携帯電話をかけるか,といった情報提供の方法に,対抗しなければなりません.今i-modeの交通情報に月に幾らか払ってもらう方法が,果たして収入源としてバランスのとれた支出構造にあるどうかは大変興味深い点です.

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