8 地図リテラシーと分かり易い地図

○森川 ランドマークや分かり易さに関連して私はかねてから思っていたのですけれども,日本の町丁目制をいわゆるストリート・アンド・ナンバー制注(9)にすると便利になると思っています.情報の出し方についてもきわめて簡単になります.
 また私は専門ではないのですが,景観上から広告看板をどうにかしたいと思っているのです.実はストリート・アンド・ナンバー制にすれば,あんな日本のけばけばしい看板が競うように並ぶようなことも規制できるのではないでしょうか.しかし行政システムを今から全部ストリート・ナンバー制に変えることは無理ですから,ITSビジネスとして(例えばゼンリンなどの地図会社が)勝手に全部の通りに通りの名前をつけてしまって,勝手な民間ベースのストリート・アンド・ナンバー制みたいなものができたら街もよくなるしビジネスもできるのかなと思うのです.

○倉沢 東京の銀座の通りはそのようにして名前がついたようです.私共の昔の電通ビルは,戦争で焼け残ってそれしかなかったので,銀座の外堀通りを電通通りと呼ぶようになったそうです.そのとき一緒に焼け残っていた交詢社の通りは交詢社通りと呼ばれています.たまたま銀座の場合は丁目と番地がタテヨコ整然としていますから,私のような在勤の人間は住所を聞いた瞬間にそれがどこかわかります.
 地図の見方というか見る能力,地図リテラシーのようなものがこれからどうなるでしょうか.私は,みんなが地図リテラシーを高めていくべきだ,という考え方は余り好きではないので,高い人と高くない人とのバランスをどう取って,その中で雑誌で見せる地図はどうなるか,カーナビで見せる地図はどうなるか,i-modeだと例えば北を上にするのか回っていくのか,というところも大変大事だという気がしました.

○中島 今おっしゃったように,よく地図の見方・読み方の情報・ノウハウが必要だ,という議論がありますが,僕はそのこと自体がおかしくて,地図にはそういう予備知識は必要なくて,見てすぐわからなければ意味がないと考えています.
 日本の場合はこうしたギャップがまだ大きくて,地図をつくる側が一番苦労してるのはまさしくそこで,住所を見てもたどり着けないわけです.ですから「ポタ」の場合も,住所はほとんど載せても意味がないという認識で地図を作っています.行政の問題はもうどうしようもないので,日本にストリート・アンド・ナンバー制を導入するのは多分無理だと思うのです.そのしがらみの中で,ITSの情報の場合も何とかランドマークなどをうまく使って,ユーザーが予備知識や情報がなくても目的地に辿り着けるように工夫する必要があります.その共通項を研究して行く必要があるように思うのです.欧米では,ストリートとナンバーがわかっていれば右か左かが分かるので,詳しい地図情報が必要ないのです.だからカーナビは欧米では普及しないのでしょう.必要ないですから(笑).

○赤羽 京都ではストリート・アンド・ナンバー制になっているでしょう.

○中島 でも中に入り込んでしまうとわからないですよ(笑).

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