13 メディアのプロはそのメディアでのみ育つ

○赤羽 1千億円かけて整備されたVICSのビーコンのインフラの未来は,ビーコンのアンテナ部分よりも,むしろ光ファイバーでビーコンまで持っていっているネットワークの方が重要なわけですね.

○倉沢 「ネットワーキングされた柱」ということが重要だと思います.

○森川 今後重要なのは,柱につける「もの」ですね.

○赤羽 私は,今のビーコンは早晩携帯電話回線にとって代わられるのではないかと考えています.これまで整備されたネットワークは,通信会社にレンタルでもして,交通情報以外にもいろいろな情報が流れるネットワークとして使ったらどうかと思っています.

○倉沢 情報を流す人間はだれかを考えたとき,残念ながら携帯電話キャリア会社の中には,コンテンツのプロがいないのです.

○中島 どこもそうですね.現実にはコンテンツをわかってる人が少ないのでは.

○倉沢 「メディアで人が育つ」と言いますが,放送の業界は何十年も経っているので人が育っています.しかしまだたった3つしかない電話会社では育っていないし,残念ながらそういう人が育つ体制になっていなくて,今ようやく「育てなければ」という自覚を持ち始めたと思われるところです.ですから何十年か培ってきた人たち,ラジオの世界,雑誌の世界,新聞の世界には期待できるかもしれません.奇しくも「ぴあデジタルコミュニケーション注(17)」の方が,「そのメディアのプロフェッショナル・プロデューサーはそのメディアでないと育たない」とおっしゃっていました.つまり新しいメディアが立ち上がったときはハードウェアのコストを何年間か被ると同時に,人を育てるコストもかかるのだそうです.この新しい分野であるITSについても,メディア・サイド・コンテンツ・プロデューサーのような人が必要なのでしょう.

○中島 利用者の立場からITSを考えると,いわゆるi-mode=テンキー世代がこれから主流になるでしょう.彼らは情報の検索とか情報の使い勝手とか,自己中心的に情報をどんどん取り入れて加工することに慣れています.一方で「サライ」的世代というべき50代〜70代のドライバーたちもITSの世界の中で忘れてはいけません.彼らはテンキーには慣れない.むしろ彼らにとってITSというのは非常に役に立つわけで,そうなると彼らのニーズとテンキー世代のニーズは全然違うでしょう.いわゆる交通混雑回避の情報よりも,同じ距離を行くならたとえ3倍の時間がかかってもいいから空いている道路でのんびりドライブを楽しみたい,といった全然違うニーズがかなり大きなマーケットを形成する.こうしたニーズの違いが出てきて,今話にあった天才的なITSのコンテンツのプロデューサーのような人が,世代間のギャップやニーズの違い,実際にドライブするときの楽しみの違いなどを全部トータルでわきまえてコンテンツを構築するようになるのでしょう.

○森川 今後は,「サライ」世代から10代の世代まで価値観もどんどんすべて多様化していくでしょう.情報論は私は素人ですけれども,均一な人たちが多いところは,放送的に一対多で流せばいいのでしょうが,受け手の多様化が進むと,やっぱり1対1やセグメントごとの情報になる.そうすると放送的でないメディアで,つまりこのセグメントだけの情報というものがビジネスになるでしょうし,「サライ」などが売れるという現象もその一つでしょう.

○中島 ですから,何百円高くてもいいからお金を使って早く行ける情報が欲しい,あるいは「サライ」世代にとっては5,000円高くてもいいからゆっくり桜並木を走れる道を知りたい,というように情報の評価基準の違いは出てくると思います.

○赤羽 そうした違いが,世の中全体で折り合いをつける,一つの契機になるのではないかと思います.現状では,折り合いをつけようと思っても,どのような人がどれだけ居て,どのようなことを考えているのか,という情報を交換する場がありません.交通混雑自体も,そもそもそうした理由で起こっている節もあるのです.

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