14 プライバーシーポリシー

○中島 現在の交通情報というのは,非常に画一的に,ここの交通量が増えたから一部をこちらへ流そう,というだけで,実際のドライバーの生活感覚と比べると非常にズレがあります.

○赤羽 車しか見てないです,極論すれば.

○大口 なおかつ,交通管理者が自分たちで持っているセンサーの情報しかないですからね.

○赤羽 ある固まりをあちこちに分けているだけで中身が全然見えていないですね.これまでは中身に関する情報を収集する手段がなかったのです.それがITSの登場で,ゴージャスなメディアを使っていろいろな情報を流すことができるように考えられていますが,その「情報」を作り出す方法が全然定かでないのです.
 それで,近ごろ,車でいうとプローブカー(Probe-Car)注(18)が注目されつつあります.現代の車は高度な電子制御をやるために加速度や速度などのいろいろなセンサーがついている.それに加えてカーナビもついていれば,今その車がどこを目的地にしていてどのくらいの速度で走行しているかがわかってしまう.それを吸い上げれば,これからどのあたりに交通が集中しそうであるかがわかるわけです.そういう予想がつけば,信号制御を対応させるとか,行政的にもメリットのある情報になります.今までにない情報がいろいろ上がってきて,いろいろな特性や志向を持った人たちが,今どのようなことを求めてやろうとしているのかがわかる.

○倉沢 車でも携帯端末でもいいのですが,全人格的な情報,言わばプライバシーを自分で移動しながら発信することに対して,お金をもらってやる人はいると思いますが,お金を払ってまでやる人がいるのかと思うので(普通は嫌ですよね),個人的にはプローブカーに対して否定的です.例えば,ある交差点を直進・右折・左折どちらへ行くか,という程度なら発信してくれると思いますが,ワイパーからブレーキからエンジンから全部把握されてしまうことに対しては反対が多いのではないでしょうか.
 お金をもらってやる人,といのはいわゆるアンケート調査やインタビュー調査の謝礼の概念だと思います.テレビの視聴率調査注(19)のような形であれば,プローブカーの機能を全部の車両が装備する必要はないので,どこかの渋滞に入っている10台に1台か100台に1台なりがどちらへ行くかを調べることで,何割かが把握可能となる.それで統計としてはいいだろう,という位置づけならばいいと思います.これが,何もかも例えばワイパーをウィンカーと間違えて動かしただけなのにここが雨ということになってしまう,という類の話は,利用者としてもう嫌だという気持ちがあるでしょう.こういう感じ方を大事にしたいですね.

○赤羽 実は私はそのプローブカーの検討委員会に参加しているのですが,そこで今のプライバシーの問題について,こういう見方が紹介されました.ネットPC注(20)が無料でもらえるのは,貰った人がパソコン使ってどういう情報のやりとりをしているかということを環流する条件付きらしいですね.同じように,交通情報でも普通なら幾らかお金がかかるところを,情報を環流してくれればお得な情報を割引で提供する方式が考えられる.民間であれば,契約形態に明確なルールを定めて情報を収集して,情報は公明正大に使わせてもらうような仕組みができると思うのです.

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