インターモーダルとITS(No.1) サーバーレイルとインターモーダル
○赤羽委員長 それでは、始めましょう。荻野さん、今日はよろしくお願いします。「座談会スケルトン案」として、非常に大枠な話なんですけれども、3点考えてみました。
1つは、インターモーダリティで具体的に何をなすべきか。つまり、どんなサービスが考えられて、どのサービスに意義があるかということですね。2つ目は、それを実現するための技術的な課題と、それを解決できる可能性はどの程度なのか。多分これが今日のメインになると思います。それから3番目は、誰がどんな動機でこれを実現するかということも重要ではないかということで、頭の隅に置いておいていただければと思います。
では、荻野さんの資料でITS研究委員会議事録を反芻して、ちょっとやりとりを始めますか。議事録を見ていただきましょう。「システムアーキテクチャ(SA)って何をやってきたの?」と言う件は、道路側のSAの意味ですね。いわゆる道路だけのITSで、SAは何をやってきたのか、ちょっとわからん。「オブジェクトが全然定義されない印象である。」という意見です。そういう視点で荻野さんの資料を見せていただいて、「実際のカーナビの設計段階では40ページの上の図が考えられている。リファレンスモデルが必要である。(道路交通の)ITSでは120のサービスを規定して、その中でいかに効率的に造りこむか?ということになっていて、閉ざされた設計思想になっている」ということですね。
○本多委員 たしかこのときの話は、今のシステムアーキテクチャでは、始めのころはいろいろなニーズを洗い出してユースケースをつくりながら何が必要かを考えていたのですが、途中からサービスが 170ぐらいに限定されて、その中に閉じこもった形でもうそのサービスの中だけしか見ていないというような割合狭い範囲でしか動いていないんじゃないかな、そういう内容だったと思います。
○荻野 これ「概念モデル」と書いてありますが、この絵は余り深く考えたわけではなくて、単純に働きを示すというんですか、我々の構想を示すときに、列車も乗客も同じように扱えるのだとか、情報がサイバー空間に集まれば、プロバイダは何をやるべきかとかを示すための一番単純な絵なんですね。ですから、これがオプティマム設計とか何かのもとになるとは到底思えないんですけど、ただ、こうやって見れば「なるほど単純だね」ということになるので、いいのかなという気はしています。
これを考えたときの歴史的背景みたいなことをご説明したいと思うんですが、なぜこうなってきたかというと、そう簡単に一発でこうなったんじゃなくて、いろいろな迷いがありました。その辺を思い出し出しご説明します。
まず最初は、やはり「ITS」対「鉄道」という図式から始まったんですね。一番単純な発想は、「自動運転ができて、高速道路に乗っかったらそのまま目的地へ着くなら何でわざわざ列車になんか乗るんだ。ITSが進めば鉄道には乗らなくなるだろう」というのがスタートだったわけです。それに対してどうしたらいいんだろうかという話がいろいろあって、それで、自動車関係の方ともいろいろ話し合いました。しかし、自動車関係の方は、自動運転は、そう簡単なものではない。信頼性、安全性の問題だとかセキュリティの問題があって大変であるという意見でした。鉄道のように2本のレールの上に乗っかっているシステムですら、もちろんブレーキ距離の差があるんですけど、信号システムや、踏切に関して解決すべき問題があるんだという話になってきた。
ITSをよく見てみると鉄道に近づけようとするための技術開発が多いじゃないか、それは無駄じゃないかというのが、まず最初だったんですね。だから我々は、「ITSが怖い」からスタートしたんですけど、ITSがやろうとしていることの中に、今まで鉄道が自動車より簡単な2本の線路の上でずっと苦労して解決してきたことを再びやろうとしているように見えたのです。わざわざ鉄道と同じようなことを高速道路でやったら、また磁気ネイルを埋めなきゃいけないかもしれませんし、フェイルセーフだ、やれ安全性だ、何だと、そういう哲学をもう一回つくり上げて、国民がそれに納得してもらって、始めて実用化されることになるわけです。そういうものをつくり上げるのは大変だろうから、無駄はやめましょうということなのです。お客に運転させないのは、鉄道が今まできたんだから、そこは我々に任せてほしい、そのかわり、我々には手足がないので手足はお願いしたい、そこが一番単純な思想だったわけです。そうすると、自然とインターモーダルにせざるを得ない。
だから我々としては、もう鉄道技術は進んでいるんだから、自動運転とか何とかいうの
は余りやっても無駄なんじゃないですかというのが最初のメッセージだったのです。これは正しいかどうかわかりませんよ。我々鉄道側の主張ですから。
というのは、鉄道分野では、今ですら信号関係で安全性だ何々だ、どうやって安全性を確認するんだ、特にソフトウェアがどんどん入ってきていますから、そのシステムが安全であることをどうやって確認していくんだということですごい議論もしていますし、検討もしているわけですね。それから、部外から規格関係、いわゆるスタンダード関係で新しいシステムが入ってきた中で、日本のシステムとして対抗するために「いや、日本のシステムはちゃんとこういう安全性の評価をしているんだ」とか、そういうことをやって向こうと対抗している、そういう動きの中で、またまた新しいもの、同じようなものをつくるよりは手を組みましょうという言い方で、我々は最初やってきたわけです。そうすると、インターモーダルですねと。
それでインターモーダルをいろいろ考えていたんですけれども、インターモーダルと考えたときに、最小管理単位は車ではないだろうということになったわけですね、当然の話として最小管理単位はお客だろう。そうでないと、例のカーシェアリングというか、例えば朝、何人かで乗っかっていきましょうというときにコントロールできないだろうということをすぐに思いついたわけです。そうすると、輸送の一番小さな単位はお客だろう。綺麗な言い方をすれば、やはり旅客とか顧客主導で物事を考えていかないといけないんじゃないかということが次は出てくる。
お客主導でとなってくると、もともとお客になるということは、移動したいというディマンドがある訳ですよね。どこからどこまで行きたいという情報がすべてであることがわかれば、我々情報処理屋だったら当然、想像できる訳ですけれども、ワンライティング方式が浮かんでくる。最初に、基本的な情報がわかれば、あとはもうシステムじゅう全部に伝える事が出来ますから、どこかでまた入力する、どこかで切符を買う、どこかで何とかする必要は無くなるだろう。A地点からB地点に行きたい、最初にその情報さえわかれば、あとはもうずっとコントロールの世界に入ってしまうんだろう。
そうすると、一番最初の「A地点からB地点へ行く」という時点で、システムから案内を受け、気に入った案をセレクトすればいいじゃないかと。ですから案内をして、それをセレクトしたということは、ユーザーがディマンドを決めたことになるわけです。そうしたらそのディマンドに基づいて、色々な手配や計画が出来る。例えばディマンドバスというのは、まさにそのディマンドで走らせようということでしょうし、タクシーを呼ぶとか、例えば共用自転車なんかもその中に入ってもいいのではないか。自転車置き場も困っているわけですから、そこら辺から始めてもいいじゃないか。そうすると、ディマンドさえわかればあとは全部行くだろう。
その次に何が問題かというと、やはり輸送システムというのはどうしてもちゃんと走らないですよね。天候の問題もあるし、いろいろな事故もある。それにどう対応したらいいのかというと、旅客の位置がわかれば、どういう状況なのか全部わかる。先ほどのモデルでご承知のように、列車の動きはもうわかっているわけですね、どこにあるかということは。今、完全にすべてがコントロールされているわけではありませんけど、キャリアは全部コントロールされている。そうすると、それに乗っているはずのものがどうなっているかさえわかればいいし、それを展開させたら駅の中に入っても案内できるじゃないかと。
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