インターモーダルとITS(No.2)
サーバーレイルとインターモーダル

○荻野 実は、視覚障害者の方の為の、駅の中の案内という別のプロジェクトがありまして、点字ブロックの中に情報を埋め込み、それを杖の先に仕掛けた通信機器で読み取るというやり方で案内をしているわけです。案内が必要なのは、ほかの方でも、始めての場所なら同じことであろう。例えば、システムはちょっと違うと思いますが、色々な所でもパーソナルナビという動きがありますよね。そういうものをいろいろ見ると、技術とか何かはもう全部揃ってきているから、あとは全部統一した話にしてしまえばうまくいくだろうということで、だんだんこういうふうに変わってきた訳です。
 そうなってくると、今度は「案内のシステムじゃないか」と誤解を受けるんですが、いや、そうじゃないんだと。最初からディマンドがわかれば駅で切符を売る必要もないし、案内する必要もないし、列車さえうまく動かせばいいことになって、鉄道側のビジネスモデルがものすごく変わってくるのではないか。しかも、人間が具体的に動いて駅に行くわけです。従って、駅がバーチャルなものとリアルなものが会う地点になるわけですから、そこにはEコマースを初めいろいろなビジネスを生むチャンスがあるだろう。今でも結構、駅で物を渡そうとか、配送とか、クリーニングでも朝渡しておいて帰りにピックアップすればいいとか、そういう話もありますから、非常に可能性が高い。様々な輸送モードを人間が動いて行く中にモード間の接点がある。最も効率高く人を集めるのはやはりノードですから、それは駅であろう。では、その駅を変える必要がある。
もう一つ、鉄道というのはこれは交通工学のご専門なので、僕が言うのもあれなんですが。例えば今、僕は中央線沿いに住んでいますけれども、中央線を高架化する。高架化するのはもちろんいいんですけれども、複々線にしないととか何とかいう話があるわけです。あれは駅の部分さえ広くすれば、インターチェンジの原理でダイヤはもっと詰まるわけですね。ですから、駅さえ投資すればいい。途中の区間に変に投資するよりは駅の部分に投資すればいい。僕の考えからすると、駅の周りは地権者も「お金さえ払ってくれれば」ということでわかりがいいのではないか。沿線部分だと、これは先祖代々の土地だからとか、お墓があったりとか何とかで拡幅とか何かは結構難しいと思いますけれども、いわゆる駅というのは相当、まだそういう意味では経済的に解決できるんじゃないか。そうすれば列車本数を増やしてたくさん通したら混雑も減りますし、そして高架化して行けば、技術が進めば自動運転も可能となるでしょう。そうすると運行コストも下がってくるから本数を増やすことも簡単になる。
 それで自動車とうまく接点を得て、まず駅に集客する。いわゆる自動車とか自転車である所へ集まって、そこからまた乗り合いでどこかまで行って、そこからまたバスで行ってかもしれませんけれども、そんなに乗り継ぐと大変だと思いますけれども、でも、まあそういう格好で行けるだろう。
 今までのやり方でそれがうまくいかない理由は、やはり情報のバリアだろう。結局、乗り継ぎにしてもよくわかりませんし、例えばここへ来るのでも、どうやって来るのかという案内だけではなしに、接続はどうか、駅を降りてから、左に行くのか右に行くのかというのを含めてその案内をしてやれば、そのバリアはだんだん減ってくるのではないか。闇雲に投資するわけには行かないでしょうから、こういうソフトウェアのオリエンティッドなアプローチでやって、その効果があった場所から今度は本格的にいろいろな意味で、例えば直通運転する機械をつくるだとか発明するとか、新しい技術を導入するとか、ハードウェアを投資する訳です。投資の大きな駅なんかもソフトで試してハードへ移るという2段階ステップもできるんじゃないか、そういうふうに最近は思っているという感じですね。
 この概念モデルの中の「タグ」というのが、出てきます。これは、わざと抽象概念を入れてあります。このタグに当たるものは、 SuicaみたいなICカードかもしれませんし、それから携帯電話かもしれない。我々が想定していたのは、本当は携帯電話なんですけど、それに限らないような格好でなるべく広げていくために、わざと指定していません。タグの持つべき脳の第一は何かというと、位置の同定なんですよね。そのタグが今どこにいるか。外だとGPSがいいですけれども、でも、やはり都会地では必ずしもGPSというわけにいかないですから。
 ただ、投資するということからすれば、都会だったら少々そういうアンテナを立てまくってもいいんじゃないかという気もしますし、田舎はGPSでいいと思いますし。だからもっと都会に投資して、もっとインフラが上がれば人がもっと動きやすくなって、それで人が動く。ですから、情報が増えることによって人が動いて、それでまた情報が増えて、そういういいサイクルになっていく。
 活発に動くということは、単に我々みたいな鉄道関係の人間が儲かるとかそんなことじゃなくて、やはり人生というか、社会が変わっていく基本ですよね。電話ができたからって家のパソコンの前でじっとポコポコやっているなんて暗い人生なので、そうじゃなくて、今までは会えなかった人たちがどんどん会う、そのためにはコストを下げないといけないでしょうし、もっと情報を出さないといけないだろう。
 今は宇宙開発事業団に行かれた、JR東日本の山之内前会長が言われていたことなんですけれども、山形新幹線がありますよね。あれは福島から先は別に新幹線をつくったんじゃなくて、単にレールを広げて新幹線がそのまま入れるようにした。あれは賛否両論あるけれども、すごい貢献なんだとおっしゃるわけですね。なぜかというと、山之内さんに言わせると、それまでは東京から山形へ行くには飛行機だと皆さん思っていた。福島で乗り換えれば東京から山形へ行けるし、ほとんど時間が変わらないなんて誰も思っていない。ところが、山形新幹線ができることによって東京駅に「山形行き」というサインが入る。それが違うんだという言い方をされたんです。ですから、情報を渡すことによってできるという部分がもっと重要なんじゃないか。
 ちょっと話が飛びますけど、イギリスとかフランスには、ロンドン地下鉄とかパリの交通局か何かを中心に、電話案内みたいなシステムがあるんですね。ロンドン圏とかパリ圏全体の公共交通について、乗り継ぎ案内とか交通状況がどうかとかいう。それでロンドンに行って、なぜこういうことをやっているんだと聞いたんです。それなりのお金がかかるわけですね。何十人もスタッフを集めて案内をしているんですけれど、こんな組織を維持している理由は何だというと、教えることによって自動車じゃなくて公共交通を使ってもらう、それを彼らがエスティメートしたら、これだけのお金が入ってくる。だから、我々が使っているのは十分リーズナブルな額であるというふうな言い方をしていました。それはちょっと眉唾なんですけどね、でも、やっぱりそういうことも一概に嘘でもないんじゃないか、もっといろいろ情報を渡して、それが普通になれば、もう少し使いやすくなるんじゃないかなという感じはしています。
 ただ、残念ながら、こういうことを提案はしているんですが、やはり目の前にある問題点として、これで何が儲かるんだと。これだけの投資をしたり何かして一体どんな嬉しいことがあるのかがわからないんですね。何でそんなことをやっていかなきゃいけないんだと。それに対してはやはりちょっとずつ、地道なやり方で広げていかないといけないと思っています。僕ら鉄道総研というのは旅客会社ではありませんので、日本の交通、特に鉄道に関しての立場から考える必要があります。そのためには、やはりアーキテクチャというか、スタンダードなり何なりがないと、勝手な方向でみんながやるのは勿体ないんじゃないかということで、アーキテクチュアというか参照モデルを作りたいと思っています。
 我々鉄道総研の研究を手伝っていただくということで、ネットワークを使って研究会をやりたいなと。我々がアーキテクチャのたたき台みたいなものを出して、それで皆さんから、半分宣伝でも結構なんですけど、うちはこういうシステムを持っているから、これをもっと汎用にすればいいんじゃないかとか提案していただく。そういうことをやっていこうと思って、今、スタートし始めています。昨年11月に総研主催でサイバーレールの講演会をやりましたので、そういう講演をした方を中心に研究会を立ち上げたら参加していただけるかどうかのアンケートメールを出しました。ちょっと情報処理の関係には余りメールを出せなかったんですけれども、その結果、「そういう情報提供ならおもしろいから参加したい」と個人も含めて 180人ぐらいの方から反応が来ました。会社数は、50〜60ぐらいですかね。
 会社で入っていただいても個人で入っていただいても結構なんですが、基本的には個人ベースです。会社として宣伝していただいてもいいし、会社として発言していただいてもいいし、だけど一応個人ベースのネットワークというか、メーリングリストにはしないのですが、メールを使ったような研究会を立ち上げていこうと思っています。
 先ほどアーキテクチャに関しての現状の問題点とか何かもお話しされていましたが、それは今度、我々が研究会でたたき台をつくるときに、コストの問題もありますから、あんな立派なものではなくてもっと簡単なものしかつくれないんですけど、ただ、そのときに注意するべきところは何かなということで、今日は大変実りの多い議論に参加させていただけるんじゃないかと思っております。

○赤羽委員長 それがサイバーレール研究会の構想なんですね。

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