インターモーダルとITS(No.3)
交通データの標準化

○赤羽委員長 中村さんがつくってくれた資料の、特に前半は今のお話の整理と結びつくようなところがあると思うんですけれども、説明してもらえますか。

○中村 これは、そういう議論の手前の話かもしれませんが。僕は専門が都市交通全体なので、都市交通全体、つまりバスも含めて道路も鉄道も全部見るという立場におります。そうすると、利用者側から見るとインターモーダル、あるいは、国のお役所レベルではマルチモーダルという言い方をしていますけれども、1つが連続性、そしてもう一つが選択できることだと。これは、交通事情の予測をするときには完全情報下で選択をするといつも羽藤先生がおっしゃるんでしょうけれども、それは現実にはあり得ない。余り言っちゃうと怒られますけれども。
 公共交通を使っていない理由を調べていくと、そもそも知らないとおっしゃることがやはり多いんですよね。知ってもらえば、少なくとも選択する割合が増えるだろう。だから、選択してもらうために物の質を上げるには、今度は接続も上げるだろうということで、この2つは独立した話ではないということが最初の3行ですね。
 次の目標イメージというのは、利用者にとって何をしなきゃいけないかで、これもリンクはするんですけれども、日本の場合、鉄道もバスも基本的に独立採算的な事業でやっていますので、事業者にどういうインセンティブを働かせるか、それからプランナーとしては全体をどう見ればいいのかを分けて議論する。利用者は、やはり利便性は向上するんですけども、連続性を向上することで公共交通も扱いやすくなるし、選択性を向上すれば適切な判断ができる。ただ、現実には、僕は普段バス会社と付き合うことが一番多いんですけど、彼らは、適切に判断すると使ってもらえなくなるから情報は出したくないとおっしゃることがある。しかし、長期的に見れば、接続の向上はその接続した両方の事業者にプラスになりますし、選択性の向上というのは、その瞬間、瞬間では「ちょっとバス遅れてるな」というと使わないかもしれないけど、常に正しい情報を出すことで信頼性が高まれば、選択肢として位置づけが高まるし、そうすると長期的な利用に行くだろう。このロジックが何回言っても誰もわかってくれないという問題があります。
 全体としては、全体的に効率を上げるために、やっぱりこういうものが要るだろうということです。
 次に、インターモーダルの中でのITSというのは何なのかという難しい議論ですけれども、基本的にいろいろな情報が情報という意味は、利用者が使うとかどうとかではなくて、管理その他、誘導、全部含めてですけれども、情報というものが流れていく、そこの部分でいろいろな形の標準化があるだろう。それは、利用者にとってはいろいろな情報自分が動くという情報を提供するという意味でもいいんですけれども、そのやりとりの手間が非常に楽になるし、そのコストが下がることで事業者は、コストダウンするというところにインセンティブを与えてあげないと、特にバス事業者なんかはなかなか動かないところがあるので、そういう側面は一応出していこうと。
 私、どういうわけかISO/TC204-WG8で国際標準の仕事を手伝わせていただいているんですね。結局、何を標準化するかがよくわからないんですが、国際標準というのがありまして、ワーキングによって多少状況は違うんですけれども、少なくとも公共交通の部会で見ると、例えば日本の公共交通のいろいろな技術がアメリカと一緒になったって、飛行機は別として、都市交通に関してはそんなに意味はない。ヨーロッパになってくると、都市間の鉄道輸送というのは割と競争的状況に置かれていますから、またちょっと話は違うのかもしれない。そういう空間的な部分の議論が1つ。
 もう一つは、中身ですね。これが昔はよくわからなかったんですけど、最近ちょっとだけわかってきた。
 何でこんなことを申し上げるかというと、実はアメリカは、TCIPというのはトランジット・コミュニケーション・インフォメーション・プロファイル。当初はプロトコルだったんですけれども。トランジットと言うからには、実はアメリカの都市鉄道の側も少し入ってきていまして、これはもうwww.tcip.orgというサイトがあるぐらいで、アメリカ国内の公共交通関連情報はこうやって国内標準すると。アメリカは基本的に、私はよくわかりませんが、ASN.1というのがあって、その書式でやるんだそうで。そういうことで、国内標準が物すごい勢いで進行しています。これはバス絡みで言えば、運転手さんをどう割り当てるとか、ダイヤが乱れたときにどう間引くとか、わけのわからないいろいろなことまで全部書式で載っかっているんです。オブジェクトモデルと言われる形式をとっていらっしゃるようで、これが今、ISO/TC204-WG8で国際標準化の提案として、ドラフトの段階に、コメントをもらう期間に入っているんですけれども、一応出ています。
 僕の印象では、細かいことはわかりませんが、見ている限り、あらゆることが全部決まっているぶ厚い資料だなということです。ただ、国際標準化案として、では日本のバス会社もアメリカのバス会社と同じやり方で管理しなきゃいけないのかとか、そういうことを聞くと、メインのところと部分のところは分けるから、部分のところは日本はVersionJでやるとか、そういうふうになるんだろうという話をしていますけれども、一応こんな国際標準化案が出ている。

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