座談会 インターモーダルとITS(No.9)
通信技術の未来 結節点としての駅


○赤羽委員長 吉開さん、どうですか。

○吉開 一般的な話で恐縮なんですが、僕のような通信屋がなぜここにいるかといいますと、私、もともとITSをやりなさいということでNTTのグループにいたんですけど、4月からネットワーク社会アセスメントプロジェクトというところに所属が変わりました。要するに、一言で言うと、21世紀はネットワーク社会になるでしょう、そこがどんなふうな社会になるのか、どんな市民生活が送られるのかを予測して、それが意味のある技術開発に向かっていくのかどうか評価しなさいというのが私のミッションです。
 それで、従来のITSも当然そのコアになりますので、継続してこのグループに参加させていただいているんですが、僕の目から見たITSというのは、モビリティのIT化だろうと思っています。「××のIT化」というのが今、流行りなんですけれども、モビリティを持ったいろいろなもののIT化だろうと思っています。
 IT化と言うと、共通のテクニカルタームは僕は2つあると思っていて、インターネットとマイクロプロセッサがコアになるキーテクノロジーで特徴づけられると思っています。その結果、得られるものが、技術的にはブロードバンド化、もう一つはユビキタス化。要するに、どこにいても、どんな情報でも受けられますねという、この2つが技術的な面での特徴だろうと思うし、ユーザー側から見ると、中村先生の資料の「情報の共有化」のところに、メリットとして××のコストダウン、入手コストダウン、これが多分1つあるんですよね。でも、これだけじゃ寂しいですよね。
 それで最近、荻野さんのつくられた資料も見てちょっと思ったのは、ユーザー側からの情報の発信が可能になるということじゃないかと思うんですよ。従来は生産側、あるいは情報を集めていた人間の方から一方的に出されていて、それを利用者側が使っていたという位置づけだと思うけれども、インターネット及びマイクロプロセッサがふんだんにあるという世の中では、ユーザーが情報発信できるようになる。だから、例えば位置の情報だってその中の1つに入るだろうし、意図的なのか偶然なのかは別にして、そういうことができる世の中になっていくと思うんです。
 そういう意味で、今日の共通の話題であるインターモーダルになったときの21世紀の社会のサービスって何があるかなと思っていたんですが、実は、鉄道の場合は余り思いつかなかったんですね。車と歩行者の場合は結構あるかなと。我々が社内での勉強会でちょっと結論めいた話になってきているのは、実輸送区間とサイバー空間というのは確かに存在するんだけれども、これが多分、21世紀になると情報という意味でどんどん離れていく。
 もともとは、歴史的に言うと、これは一体化されたものだったと思うんですよ。ジンギス・ハーンぐらいから。文字があって、それを運ぶツールと物を運ぶツールが1本のシルクロードみたいなところで完全に一体化されていた。それが印刷技術の発達によって本という形になって、一種のサイバー空間ができ上がって、それから物を運ぶ部分と情報を運ぶ部分が少し分かれ始めて、それで、技術的には物を運ぶ部分は車とか列車とかのスピードになったでしょうし、情報に関しては最近は光の速度で動くようになって、バラバラなんだけれども、でも、情報量と物流量というのはほとんど一体ですよね。情報量が多いところは物流量も多いでしょう。ほとんどパイプとしては一体化していますでしょう。それが今回のモビリティのIT化によって、多分かなり違ったことになる。情報の流れが物流とは関係ない形で動いていく。
 例えばEトレードですか、証券のお金の流れとか、あれなんかもう端的ですよね。そういうものが一例としてあるように、多分サイバー空間と実空間がどんどん離れていくんだけれども、それは実はいいことじゃなくて、必ずどこかで一体化していないと、リンクがつながっていないと、多分我々の生活はハッピーにならないと思うんですよ。というのは、サイバー空間だけで悪いことをやる奴がいっぱいいますからね。
 そこまで結構社内で議論になって、何かいいことあるかな? ということでインターモーダルのキーワードから1つご紹介すると、今、インターネットの上でマーケットプレイスみたいな、物を買って支払いもやってというのがあります。これ最初はおもしろかったんでみんな使ったんだけど、すぐに悪さする奴が出てきて、今、壊滅状態なんですね。危ないんですよ。要するに、発注して物だけ運ばせといて、金は支払わないでドロンしちゃうとかですね。
 それで最近、比較的うまくいき始めているのは、物の選択と発注まではサイバー空間でやる。そして実際のブツの購入はリアル空間にとりに行って、そこで決済をする。具体的に言うと、発注は携帯なりパソコンでインターネットでやる。そして物はどこにとりに行くかというと、コンビニですね。だからサイバー空間と実空間との連帯なので、これなんかは非常においしい。これがインターモーダルにどうつながるか、ちょっとあれかもしれませんけれども、輸送という面では確かにつながりがあると思ったんですよね。

○赤羽委員長 駅が「コンビニ化」するということですか?

○吉開 駅のコンビニでもいいのかもしれませんね。

○赤羽委員長 いや、交通システムで言うと、駅がコンビニの役目をしている。

○荻野 ええ、そういう解釈で、駅に人が集まるんだからというのは、コンビニだとわざわざ寄らなければいけないだろうという話があるわけですよ。家へ帰る前に、その道路上にコンビニがあればいいですけれども、ちょっと横にあったら5mでも横に行くじゃないかと。でも、駅は通るんだからというのが我々の主張ではあったんですよね。駅でピックアップするというのは、それだけ無駄がない。

○吉開 では、そこで物を交換してくれるわけですね。

○荻野 ええ、そんな形です。今でもちょっとやっているみたいですよ。
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