座談会 インターモーダルとITS(No.13)
官の役割、民の役割
○赤羽委員長 インターモーダルな情報システムを実現するために、道路の側がやらなければいけないことがはっきりしてきます。鉄道は、お客さんが多くなっても混雑度が上がるだけで、ダイヤには余り影響しないですよね。所要時間は計算できる。でも、車は需要が大きくなり過ぎると渋滞して旅行時間が変動してしまうことが多い。ですから、道路の側こそ今どのくらいの人がどこにいて、どこに向かおうとしているのか、つまり交通需要の分布に関してあらかじめ情報収集し、短期的将来の交通状況の変動を予測して、今出発しようとしている人が目的地に到着するまでに「どのくらいかかりますよ」とかなりの精度で情報提供できるようにならないと、その先で何時発の電車に乗り換えるというところがうまくつながらない可能性があるんですね。
実は今まで道路の側では、民間事業者が道路交通情報を収集・加工したり、それを提供したりすることが実質的に禁止されていました。それが今国会で審議中の道路交通法の改正案では、官が持っているいろいろな道路交通情報も開示するし、民間が独自に情報収集しても加工し提供して良いということになりそうです。一定のガイドラインは、設定されることになるとは思いますが。
難しいのは、やはり投資する動機づけがうまくできるかということです。例えば、ETCをうまく使うと渋滞も緩和できるのではないか思いますけれども、それは料金所にETCの路側装置を設置し、そこでの処理能力を上げるだけでは不足なのです。そこで渋滞が解消しても一般道路へ下りるところで渋滞してしまう。それを防ぐためにはETC専用のインターチェンジをつくる。そういうインターチェンジでは、ETC料金所の処理能力は従来型よりも高いので、たとえば4つブースが必要だったところを2つのブースで需要を満足できる。そうすると非常に簡単な構造にできるので、建設コストもかからないし、人件費もかからない。手軽に増設できる。そうなれば、交通需要が空間的に分散するので、一般道におりるところでも渋滞しにくくなる。それから、ETCのもっと大きな機能は、需要が集中している時間帯は高くして、オフピークの時間帯は安くするというような柔軟な料金設定ができることです。
でも、そういう方策を導入して渋滞を解消すると、例えば利用者が増えて有料道路の料金収入が増えるという効果もあるかもしれません。しかしそのような効果は、渋滞が減ることにより社会全体の時間損失が減るとか、渋滞の末尾に追突するような事故が減るということで、渋滞の中で発生している損失を減らすという効果に比べたら微々たるものですよ。ところが、例えば道路公団なり首都公団がITSでいろいろな技術を使って渋滞を減らして、事故を減らしたとしても、そういう社会的な効果を上げたということは、各公団には還元されないんですよね。そうすると、ETCのシステムをつくるのにたくさんお金がかかる、でも料金収入増が、それに見合うかどうかわからん。例えば、ETCを装備した車は雨の日に窓を開けなくても料金が払えるし料金所で小銭を見つける手間も省ける、だからETCのサービスを受ける人には、割増料金を適用しても良いのではないかという発想も出てきてしまっているのです。これは、本末転倒なんですが。
償還計画にしたがって借金を返済しなければならない現実を前提として、努力・工夫をして渋滞・事故を減らしたら、それに見合う分は税金で補填するような政策的枠組みが用意されないと、なかなかITSも進展しないのではないかと、私は主張しています。
鉄道も、同じような面があるのではないでしょうか。例えば、はっきり言って、溢れない程度になるべく運行本数を少なくして、可能な限りお客さんを詰め込んで運行した方が鉄道は儲かるはずですよね。
○荻野 まあそうでしょうけれども……。でも多分、まだ民営になって十何年ですからね。いわゆる国鉄だったですから、悪く言うと日の丸ですよね。だから、余りそういうことは考えていなかったと思います。やはり走らせられるなら、できるだけたくさん走らせる。もちろん、新幹線の場合は先生おっしゃるように、なるべく……。ただし、どうせピークに合わせて車両は買わざるを得ないので、あと節約できるのはメンテナンス費とかそういう部分ですね。もちろん運転手もあるんですけれども。
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