インターモーダルとITS(No.22)
情報利用者とプライバシー


○羽藤 感知器は集計されたデータで、その場合プライバシーとかは別に問題ないんですが、やはり鉄道側も道路の側も個人の位置のデータが欲しい。そのときに、位置のデータというのはやはりプライバシーなんです。個人情報がわかりますから。だから価値を持つし、ビジネスのチャンスもある。
 うちの研究室で3年ぐらい前に、PHSを使って関西地区で位置特定の実験をやったんです。被験者10人にPHS持たせてやると、リアルタイムでAさんっていうヒトが、例えばですけど、彼女と一緒にホテルに入って、加茂川に出て、2時間ぐらいずっと外にいたというのがわかるんですよね。これはもう完全にプライバシーの侵害です。

○赤羽委員長 でも知っているんでしょう、本人は。

○羽藤 このケースでは契約が成り立っています。ここが重要な点で、例えば、ビデオリサーチが何の番組を見たか全部調査しています。あれは 500人とかまとめて視聴率を測って、それはマーケティングの情報として価値を持っている。そこには何らかの契約関係が成り立っているので、それさえあれば、例えば詳細なレベルの人の行動をとって、それを何サンプルか集めて売るというビジネスはあるかもしれない。その場合は、個人情報の開示に対して、謝礼が支払われるっていう契約しているから問題ないということですね。
 もう一つあり得る契約の形態は、これは数年前、ある学会のときに赤羽委員長が僕に聞かれたことなんですけど、例えば、僕がこの情報をオープンにすることで、逆に交通情報が無料で得られる、エリア情報が得られる、そういうメリットがある。そのかわり僕の位置情報は使ってくれと。それは契約じゃないんだけど、そういうバーター取引が成立している。例えばインターネットのネットスケープとかエクスプローラーで、クッキーのオン・オフを自分でやれますよね。でも、みんな気にしていない。そんな設定する人はするけど、知らない人もいるというレベルです。
 いろいろなサイトを回っていると、クッキーをオフにしていると入れないサイトがあります。それでみんな慌てて外す。位置データに関しても同じようなことはあるだろう。そういう仕組みがどんどん出てくると、位置データはどんどんストックされるし、それがちゃんと隠蔽化されて、操作できない形で公開されれば、それをもとにして新たなビジネスができるという仕組みは多分あり得るのかな。だから、できる可能性はあるんじゃないかと思います。

○赤羽委員長 要は、個々のユーザーが自分のプライバシー情報がどう扱われているかを知っていて、かつその扱われ方を選択できるということなんですよ。

○羽藤 そこが不透明だとだめなんです。逆に,はっきりしていれば、何の問題もない。勝手に交通情報を流して、交通渋滞を引き起こすとまずいとかいう議論がよくあります。だけど、株価なんかの場合は、風説の流布とかで、はっきりインサイダーを罰するというような仕組みがある。きちんと法整備して、そういうことをやったら罰せられますよというガイドラインを示して、そうしたら後は、自己責任でやればいいんです。それは法律だけの問題で、きちんとガイドラインやっておけば、罰すればいいんだから全然問題ないと僕は思います。

○赤羽委員長 例えば、交通予測情報を提供するプロバイダが民間に幾つかあれば、そこから3つとか5つ引っ張ってきて、とんでもないものははじいて意見の合ったものだけ自分のルートガイダンスに使うとか、そういうサービスも出てくるかもしれない。独占とか寡占は、その意味でよくないですよね。暮らしの手帖とか国民生活センターとかで、商品テストをやっているでしょう。あれとおなじ仕組みで、どのプロバイダがどのくらいの精度かを事後的に検証して公開されて行くと思いますよ。あるいは債権の格付機関みたいに、このプロバイダの情報は投機的だとか評価される。つまり、すごく早いルートがときどき提供されるけど、そうでもないときがかなりあるとか。(笑)

○中村 ハイリスク・ハイ何とかですね。

○赤羽委員長 そうそう。

○羽藤 交通情報そのものは、既存の交通情報プロバイダの苦戦を見ていてもわかるように、今は、なかなか難しいですよね、今のところは。

○赤羽委員長 確かに難しい。単独ではね。私の最近の表現だと、交通情報というのはオリーブオイルみたいなものだと。それを1リットル缶で買ってぐびぐび飲む人はいない。でも、美味しいイタリア料理をつくろうと思ったら欠かせない。

○羽藤 きれいにまとまりましたね。(笑)

○赤羽委員長 何でも例えが食べ物になってしまうのが私の品が悪いところです。

○羽藤 オリーブオイルは万能ですもんね。「この料理だけ」じゃない。なるほど。

○赤羽委員長 その意味でもインターネットって、いろいろなアクティビティと交通情報をくっつける場としても価値があると思うんです。
 最近のいろいろな分野の動向を見ると、まさにいろいろな条件が揃いつつあるタイミングだと思うんですよ。
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