座談会 インターモーダルとITS(No.26)
情報と移動
○吉開 そうなんだけど、もう「やっていない」なんていう時代じゃなくて、おっしゃったように、まずやっちゃうことじゃないかと思うんですよね。頭の中で考えていても、もう多分、進まないんじゃないですか。ドキュメントだけはあっちこっち山のようにできていると思うし。
○羽藤 さっき吉開さんが言っていた情報の取引と移動量の関係で、今こう行っていたのが全然違うようになると言っていたのは……
○吉開 ええ、離れていっていると思いますよ。
○羽藤 要するに、情報の方がずっと先に進んでいってしまうということですか。
○吉開 全然別の方向に。
○羽藤 それに関係あるのかどうかわからないですけど、僕らが学生とか若い子に「将来どんな都市を予想しますか」なんて講義で尋ねると、かなりの子がコクーンというか、繭の中にいて安楽にみたいなことを書くんです。
○赤羽委員長 引きこもりじゃないですか。
○羽藤 そうなんだけど、彼らは環境問題みたいな意識は高いんです。やっぱり教育のせいだと思いますけど。それで、移動は余りよくないし、しんどいし、混んでるし、それでパソコンがあってみたいなことだと、やっぱりその閉じた中で楽しく時間を過ごすことができればOKだみたいなこというわけです。ドラマツルギーがあってバーチャルリアリティのしっかりしたものがあったら、確かに言われているようなことが起こるのかもしれない。でも、実際に物は動くんですよね。食べ物とか本とか衣類とか。そうすると、Eコマースみたいなものも含めて、そこの移動の不確実性を減らすための交通情報というのはある。今までパーソナルな移動に対してどのような付加価値をつけるかという話をしているんだけど、長期的に見ていったときには、ひょっとしたらそういう移動の存在そのものが,かなり危ういんじゃないかいうのは何となく直感としてはあります。ビジネスモデルとか考えて交通情報提供会社とかテレマティクスとか,仕組みとして何かおもしろいことをやっていけば、バーッと現時点では盛り上がるのかもしれないけれども。
○赤羽委員長 そういう部分も確かにあるのかもしれない。だけど、情報がグルグル回った結果として、ある2点がつながって、その2点をやっぱり人が移動することになるんだと思う。
○羽藤 結局,現実の空間に魅力的なコンテンツが埋め込まれない限り、移動は発生しない。それが今、仮想空間にどんどん新しい情報、コンテンツが出てきていて、そこではバーチャルに人が行き交うんだけど、現実の空間に新しいコンテンツが埋め込まれているかというと、それは相対的に少ない。あえてあるとしたらヒストリカルなものとかネイチャーとか、そういう部分です。そこに回帰する意識が強まれば現実空間の移動のウエイトは維持できると思いますけど。
○吉開 僕は、赤羽先生の言う解しかないと思うんですよ。ところが、学生さんが言うようなことを若い人たちが考えているのも事実なんです。そういう社会というのは、多分とんでもない破滅の社会ですよね。人と人とのつながりがなくなって、社会生活もない。全く1人きりの生活でしょう。そうならないようにするためにどうすればいいか考えないと
いけないんですよ。ただ移動と言っても多分だめで、まちづくりそのものだと思いますよ。
○赤羽委員長 人と会いたくなるような街にしなきゃいけないんですよね。
○吉開 それでラッシュアワーはなくなってね。(笑)だから、移動するための目的が何なのか。多分それはライフスタイルそのものを変えることになるんだけど、変わったら多分、街のつくりも変わりますよね。
○羽藤 「まちづくり」と考えたときに、今までは道路をつくるという物ベースで考えていたんだと思います。その結果、何が起こったかというと、地方都市なんかだと郊外にショッピングセンターができて、中心市街地は自滅する。中心市街地がなくなるということはコアがなくなるということですから、それはやっぱり都市全体が沈むんです。我々は都市を発展させようとして、インフラをいろいろ整備してきたんだけど、実は長期的には逆の方向に進んでいるのかもしれない。その結果として地方都市の中心市街地の魅力が減ってきている。で,どいう方向にいってるかというと,みんなが家でテレビを見たりとか、コクーンみたいな状態になっている。近くに行ってもおもしろくないんです。
やはり交通とまちづくりみたいなことがあったときに、どういうふうに魅力的な、現実の空間をつくるか。それはまちづくりそのものです。それをどう確保していくのかというのがすごく重要だと思います。そのための仕掛けとしてのバーチャルトランスポートだったりサイバーレールがあったりするんじゃないかな。
○赤羽委員長 どこまで見て今の問題を考えたらいいかというところは、落ち着きましたかね。
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