座談会 インターモーダルとITS(No.28)
情報と移動3


○中村 鉄道と自動車の棲み分けは、いろいろな面であるんだろうと思いますよ。そう簡単に、全部パラレルに比べる話では全然ないと思います。
 ところが、個人の移動のレベルの選択肢としてはパラレルになる場面があるということだから、難しいところなんですけどね。

○荻野 多分おっしゃるとおりなんでしょうね。長距離バスと地方の特に四国なんかそうだと思いますけど、道路がかなり立派で、鉄道が苦戦している。

○羽藤 ピンチですよ四国は。高速道路がある程度ネットワークとして整備されつつあるんですが、そうすると、やっぱりほとんどの方は車に転換しますよね、あの狭いところだと。

○大口 でも例えば四国に首都が移転して、東京ほどの高頻度な行き来が必要になったら道路では持ち切れずに鉄道の方が効率が上がることだってあり得ます。

○中村 単位断面当たりの、時間当たり運べる人数の最大値みたいな議論になってくると、満杯のバス対鉄道だと、やっぱり鉄道が勝ちますよね。

○大口 あるいは、逆に利用者から見ると複数の選択肢が並列に並んでいることがあり、利用者の状況に応じて、一方がいいケースもあるし他方がいいケースもある。それを一方しかないと思っているから、ある場合にはいつも不便だと思いながら使っているようなところをバリアを取り払っていくためにも、インターモーダリティは非常に重要だと思います。例えば荷物を持っているときは電車に乗りたくないとか、駅前のホテルで会議があるときは電車で行きたい。とにかく、そうやって自分で最適と思える選択肢が選べるような環境が少しでも整備されていけば、それだけで大分変わるはずでしょう。

○赤羽委員長 今の話と逆に、交通工学とか交通管理というと、何か根こそぎ車から鉄道に転換させるとか、要するに、一たん転換したら毎日鉄道を使ってもらわなきゃいけないとか、そういうスタンスの話が多いんですよ。でも、今の話のように、状況に応じて、同じ人でも鉄道を使いたいときと車の方が便利なときがあるんですよね。そういうときに、普段鉄道を使わない人がスッと鉄道を使えるような環境を整えるのが、均衡のとれた交通システムの使い方につながってくるんじゃないでしょうかね。

○荻野 まさに先ほどの、ETCで鉄道にも乗れる、同じなんだと。

○赤羽委員長 そうそう。今でもできるんじゃないですかね。スポッとETCからICカードを外してパスケースみたいなものにはめると、それがコンタクトレスに鉄道と通信しちゃうというアダプター、やろうと思えばできるでしょう。

○荻野 技術的には、どこかの国ではやっていると聞きましたね。アクティブではだめなんですけど。そんなに電波をバンバン出すと電池が持たない。パッシブだったら共用できるんですよ。だから、 Suicaでチョンとやるのと同じように、高速道路もゲートのところでチョンとやったら開いてスッと入っていくとか。

○赤羽委員長 だって、パソコンの世界ではPCカードをデスクトップのPCIのあれで使えるようにするアダプターとか、サードパーティで出していますよね。きっと出てくると思いますよ。

○大口 ではETCのゲートもパッシブ型に対応しましょうという風にフレキシブルに変わっていけばいいのですが、多分こうした点が非常に危惧されているのでしょう。
 外国ではタッチ・アンド・ゴーとETCの両方や、3種類ぐらい準備したりしてフレキシブルに考えています。クレジットカードを持つことのできない人がいない社会はあり得ないでしょう。破産している人や海外旅行者が必ずいるわけです。そういう汎用性を狙わないと、何か1つでしか成立しないシステムは、初めから失敗だと考えるのは当たり前です。

○赤羽委員長 やっぱり管理主体は、自分のところが持っているシステムの運用が一番なんですよ。それが利用者にとって最適かというと、必ずしもそうではない。でも、その管理主体の姿勢はそんなに批判されるべきことではなくて、それは自然なことで、それを利用者の側が自分たちで都合のいいようにどうやって引っ張ってくるか、これからは自分たちで努力してもいいんじゃないかな。さっき自分たちでいろいろ情報を集めて、そして自分たちで使うとか、それをフィードバックするとかいう話がありましたけれども、そういう努力があってもいいと思いますけどね。
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