価値ある混雑情報を如何に生成するか?

by Hirokazu AKAHANE Date: Mon, 12 Apr 1999 14:36:26

赤羽@委員長です.

天気に関する情報になぞらえるなら,「今どこで雨が降っているか」という情報より,「明日の何時くらいからどの程度の強さで雨が降るか」という情報の方が,はるかに価値が高いでしょう.だからこそ,気象予報士という資格が存在し得るのではないかと考えています.

同じように,「今どこが混雑しているか」という情報より,「これからどう混雑するか」という予測情報の方が,はるかに"使いがい"があり,したがって市場価値も高くなるでしょう.これは,交通需要を空間的に分散させるよりも時間的に分散させる方が,交通状況を改善できる余地がはるかに大きかったという,桑原さんの東京都心部を対象とした実証的研究成果からも,伺い知ることが出来ます.

まともな予測をするためには,交通情報の実時間処理のみを前提にITSを構築しても不十分で,交通行動およびその結果としての交通状況に関する情報を収集・蓄積 し,かつそれらを統合的に運用してあらゆる交通現象に関する理解をさらに深め,それを実時間処理に反映させる枠組みが不可欠です.

その交通情報の統合運用の概念例が,Web Forumの「論点の整理」の「我々が考 る使い方」にある図に,ITS研究委員会における議論に基づいて掲載されています.(ちなみに,概念図は2つありますが,現在までに掲載されている図はそのうちのひとつで, 同委員会内では提案者にちなんで「森川の図」と通称されています.)

赤松さんが懸念するとおり,いくら情報を集めてみても予測しきれない部分は残ったり,あるいは提供した情報が再び各主体の交通行動に影響することから"不確実 性"がかえって拡大する可能性もあります.ITS委員会でも,同様の議論がありました.

ただ,ドライバーの出発地,目的地,年齢といった様々な属性情報から,交通行動の結果である交通手段や経路などの選択を十分な精度で予測できなくとも,様々な情報収集手段を介していかなる交通手段,経路を選択する予定なのかという"結果自 体"を事前に収集して総合することで,"予測の余白"を埋められる可能性はないでしょうか?

質的にも量的にも我々が今まで手にし得なかった交通に関わる様々な情報を収集し,それらを個々の交通主体に還流させ得る技術的可能性が提示されているのですから,それを如何に交通工学に取り込んで行くべきか,基本的枠組みから見直すべきでしょう.

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