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6 「使い勝手が良い」地図情報とは
○中島 雑誌という仕事では,読者が本当に使えるか,という使い勝手が基本的には非常に重要です.「ポタ」という雑誌を創刊するに当たりまして,オリジナルの地図を作りました.その当時はまだインターネットはそれほど普及していませんでしたが,インターネットなどでデジタルマップを利用してビジネス化していこうという方向性もあって,いわゆるデジタル地図にしたわけです.
雑誌における地図情報を売り物とするいわゆるエリア情報誌には,「HANAKO」や「TOKYO WALKER」などいろいろありますが,それらに共通しているのは,日常的に読者が実際に使える「アミューズメント情報」,つまり食べる,買う,遊ぶ,観る,その4つ(煎じ詰めればその4つしかないと思います)のリアルタイムの日常的なアミューズメント情報とそこに到達するためのアクセス情報です.どこにおいしい店があって,どうやったらそこに辿りつけるか.観たい映画があったらどうやってそこに行くか.そういうアミューズメント情報とアクセス情報の2つが2大アイテムで,情報雑誌にはそれ以外には何もないと言ってもいいでしょう.
そこで,読者が日常的に自分の生活のエリア内で,どこかへ行って食べたり遊んだりしたいと思ったときに,快適にむだなく便利にそこに辿りつくには地図情報が大事になります.そこで私たちは,いわゆる地図は地図そのものだけで価値がなければならないと考えました.地図を見て地図だけでそこの目的地に行けるということを重視したわけです.そこで私たちが考えたのはユーザーの日常感覚です.例えば待ち合わせの場所や初めての場所を教えるときに,例えば最寄りの駅から歩くときに南か北かという教え方はしないでしょう.どちらが南か北かは一般にはわからないので,東西南北は関係ありません.例えば渋谷駅の近くのお店なら,渋谷駅から恵比寿へ向かって右か左か,という説明をするでしょう.また普通の日常生活の中で道を教えるときには,一般的な地図で重視されている学校や警察や病院などの公共施設は目印となるランドマークとして使わずに,むしろ歩行者の目線で目に付くコンビニやファストフードやガソリンスタンドを使います.このようにランドマークとして重視しなければいけないところをまず基本的に考えました.
「ポタ」の地図では,どの地図も東西南北はメチャクチャです.地図によって,北が下や左や右や上になっています.その代わり一般のユーザーにわかりやすいように,例えば電車の進行方向のどちらに降りるかを起点にした地図になっています.また,近くにコンビニやファストフードがあればランドマークとして必ず入れています.地図には「何本目の道をどちらに入る」という解説記事はなく,この地図だけを持っていけば目的地に辿りつけることを重視したわけです.
さらに大人のアミューズメントとしてドライブがあって,自分の車に乗ってどこかへ買物や食事に行くケースが多いので,「ポタ」の場合はドライブ情報を結構重視しました.その場合にもドライバーの目線を重視して日常的な感覚を大事にしました.ドライブ地図を作る上でドライバーの目の高さを考えるのは結構大変で,実際に予備取材でライターとカメラマンが遠隔地であっても何回も目的地に行っていろいろな道を通ってみてランドマークを探したりします.ドライバーの目の位置で,看板などのどのようなものが目につくかを調べます.一番役に立たないランドマークというのはビルの名前です.これは歩行者用の地図の場合も同じです.わかりやすいのはそのビルの1階にどういうお店が入っているか,例えば○○というコーヒーショップがあるというように,そういうランドマークがないのならビルの名前だけでは役に立たないのです.
また,都市部の繁華街のドライブ地図の場合は駐車場の情報が重要です.収容台数と,駐車場のアクセス,つまりどういう経路を通って駐車場の入口にたどりつけるのか,出口からどういう経路を通ればうまく幹線に出られるか,こうした情報を矢印で地図上にマークしました.都心や繁華街の場合は一方通行が多いですからね.こうした工夫をいろいろしたわけです.
文字情報で補わなくても地図だけで行ける,しかも日常的な生活感覚,歩いたり車を運転したときに目につく,実際に使えるランドマークを使うというやり方が,「ポタ」の地図作成のコンセプトでした.
BBS投稿コーナー
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