15 「ITSファン」を作るには?

○森川 利用者が謝礼をもらってモニターとして情報を提供する方法に対してあえて逆の見方しますと,利用者にお金を払ってもらって情報を提供してもらう方法は無いでしょうが,全員強制ならばあり得ます.例え全人格的な情報は流さなくても,電子ナンバープレートの話題もありますし,全ての車については,今どういう状態でどこを走っているかを全てネットで吸い上げることを義務化するような時代がもうすぐ来るように思います(もちろんそのかわりお金は払いませんけれど).
 これを人を対象に行えば人権問題ですが,あと 100年後に車というものがあり得るかどうかわかりませんけれども,車はいわゆる持続可能な交通手段か,大きな車を走らせて都市の貴重な空間を食いつぶしている,もっと否定的な話すると,最近の犯罪はほとんど車を使って行われているということを考えると,かなり社会に費用がかかっているわけです.全部の人の行動までは吸い上げませんが,車だけでもきちんと把握して,それなりのロードプライシング的な料金を取る,あるいは大きな車で町中に乗り入れたらそれだけで空間専有料金を取ることは考えられると思います.少しこれは危険な発想かもしれませんけれども.

○大口 今のお話は,「システム化された個人輸送手段」が構築されるようになるのだと思います.一方で,「現在の自動車」というものには,システム化できない側面もあるように思います.だからそういう意味で,僕は二極化すべきだと思っていますけれども.
 混雑と無縁な地方で走る場合に楽しみとして乗る場合ならば「現在の自動車」であってもいいでしょう.ところが,都市の中で,個人が行動することが他人に負の影響を与えてしまうような場においては,ある種の公共性が必要であり,そこではいつまでも自分勝手というわけにはいかずに,いろいろな形でシステム化されなければいけないのだろうと思うわけです.

○倉沢 これは一般論ですが,「車好きな人」,「ファン」というのは大体リストラに対して否定的であることがとても気になります.つまり車が本当に好きで大金をかけてしまうような人は,ITSの流れに,それがわかればわかるほど否定的に反応する可能性があります.こうした人にどうやってこれを理解してもらうかがとても大事です.実際,警察のNシステム注(21)に対して幾つかの車雑誌が反対運動を起こしています.よくプライバシーの侵害だという言い方がされますが,どうやらむしろ独占的に警察がやっていることが問題だ,という言うのです.世界的に,「交通警察」が交通省にある国と警察省にある国と両方ありますが,公安や刑事を扱うところがやっているということが納得いかないという言い方をされます.ひょっとするとNTTドコモなら許されるのかもしれません.
 だから,ITSでもプローブカーでも,自分がだれに情報を委ねているのかを明確にしないとファンがつくれない.「ITSファン」なるものをつくるような流れにしないといけないと思います.それは車に限らず,情報をやりとりする中で自分のIDが発信されることに対するファンをつくるような方法を取らないと,どこかでつまずく危惧があります.i-modeもまた然りです.

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