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19 情報の独占と寡占の境界
○倉沢 多分日本に3つしかない主体のうちの1つ程度なら許される(例えば携帯電話のNTT・DDI・J-PHONEグループや車のトヨタ・日産・ホンダのように),という感じがします.1つしかない主体というのは,感じとしてまずいのでしょう.だからマイクロソフトだと1つしかないので問題だと感じて,実際パソコンでひっかかっているのでしょう.パソコンの場合もそうなのですが,ITSに関してこのような政策合意形成コミュニケーションが非常に重要であることをほとんど議論していないのです.
電気屋・車屋・電話屋,なんでもいいのですが,その商品が全体像の中の位置づけやトータルなサービスの中の担う部分を明確にしないと,全体が失敗する可能性があります.何かで失敗したときに全員が責められてしまう構図になり易いので,気をつけないといけないと思います.自動運転や自動料金収受などが全員装着を前提とするシステムのステージに達して正常に作動するのが当たり前となると,何か失敗が起きたら特定の企業のシステムが悪者になってしまう.実はそのシステムを発注した道路屋さんに本当の責任があるかもしれないのに,その一企業が責められてしまうことがあります.発注書通り受注したのだから責任は無い,とはその企業は言い切れないのです.このような点は,よくよく気をつけなければいけない特殊なコミュニケーション対象だと思います.
それまでばらばらな情報で人を誘導していた仕組みが,全部統合されてしまうと,どこから誰の責任になるのかわからない.だから危険だという言い方もありますし,それだけの新しいマーケットだという言い方もあるでしょうけれども,ある種のマーケットとしてのリスクもあるわけです.そこは今たまたま上手くいっていますので,そのまま上手くやってしまいたい,と思っています.
○森川 吸い上げた情報を一元管理するかネットワーク化するかは分かりませんが,もし一元管理になってそれが例えば警察になることは多分歓迎されないわけでしょう.
○赤羽 あらゆる情報が1カ所に集められて,1つの組織が管理運営する必要性はありません.分散管理されていても,それを巡回しつつ必要な情報を取得してくる技術もあります.共通のルールで公開されていれば,利用する側からはあたかも統合されたデータベースのように活用できます.
○森川 現在,愛知県でITSセンターというものを作ろうとしていますが,その実体は何であるかが議論されています.実際にITSセンターという建物を造ってそこに巨大コンピュータを置くわけでなく,交通情報や地域の情報や身障者のための情報など,あらゆる交通と活動に関する情報を集めて,それを必要に応じて利用者の携帯端末に流すようなシステムとして考えられています.
○赤羽 イメージとしては,ホームページにハンディキャップを持った人たちのためのサイトやマニアックな人たちが求めるサイトなどのいろいろなボタンがあって,ボタン押すとリンクが張られていて,特定の情報を持っているサイトに飛んでいく,それを仲介をするようなものなのでしょう.
○倉沢 北海道開発庁が一生懸命頑張ってつくったホームページサイトで「北の道ナビ」があります.いわゆる夏の北海道の観光情報から,冬場でどこの国道がブリザードで前が見えないかということまでを全部トータルで見せています.なかなかセンスがいいと思っています.
これから各地域でITSを導入するときに,地域毎にいろいろなITSが有り得ます.消費者に負担させれば済むITSや道路保全政策としてやるべきITS,情報弱者救済のためのインフラ政策としてやるべきITSなどいろいろあります.それぞれの施策を「ITS」とひと括りしていいかどうかも考え直した方がいいですが,これから地域展開するときに,受益と負担の関係の中で,どのアプリケーションをどのように宣伝するかを整理する必要があります.要するに,あるものは雑誌を読むのと同じ感覚でいい,けれども別のものはみんなの幸せのために税金から出します,といった整理です.
○赤羽 地方の交通情報の場合は,例えば大雨が降って土砂くずれが起きてこのルートは使えないが,それを知らずに行ってしまったら生死にかかわる,ということがあります.一方都市部では多くの人がVICS情報をそれなりに必要としているけれども,それは広く薄く必要な情報です.地方のITSに必要な交通情報は,都市部ほど多くの人は必要としないけれども,1人1人にとっては大変大事な情報です.しかし,重要度を積算しても大した量にならないから,システムとしてはそんなにお金をかけられない.ですから地方のためには,それなりのコストでそういう大事な情報を収集や提供できるようなシステムを考えて行く必要があります.
○森川 例えばそういう土砂崩れの情報などは,衛星から監視しておく,という手もあるでしょう.
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