第2回ITS研究委員会議事録
(28.Nov.Friday, 1997, 10:00〜12:30)

(a) 交通情報の収集,処理に関わる諸課題にについて

B; BeaconやETC技術によるPrivacyに関する問題をどのように克服することができるのであろうか.

E; 現在の仕組みでは,BeaconによるUplink情報は,車両がVICSサービスエリアに進入するか,エリア内で最初にサービスを受けるときに,その都度乱数に基づいた車両IDが付与される仕組みのため,特定の車両と走行データとがマッチできないようになっている.ETCでは,料金前納方式ならば個人は特定されない.料金後納方式の場合には,Credit Card情報と直結するのでPrivacy情報管理の枠組みが前提とされている.

B; 関連する情報のうち,何をどのように公開するか,「公開の原則」を確立することが重要であろう.収集された情報を,どのような仕組み,枠組みでデ>ータとして管理するのが望ましいのか,検討が必要である.

(データ利用にあたっての倫理規定のようなもの)

F; 現在交通調査としてよく行われている,「パーソントリップ調査」と「道路交通センサス」を融合するために,ITSが活用できものと期待されている.

例えば「パーソントリップ調査」のためにモニターを募り,ある調査期間のみモニタ者の運転する車両の利用経路,時刻などをETCやBeaconなどITS技術を用いて調べさせてもらうことで,従来のアンケートよりも廉価に調査できるメリットがあるであろう.

D; PHSの基地局単位で位置の把握が可能なので,パーソントリップ調査で目的としている精度には十分見合うものと考えられる.例えばICカード型のPHSを多数のモニタに配布し,これを一日持って行動してもらい,後日郵送回収という方法が考えられる.

B; 「パーソントリップ調査」と「道路交通センサス」という,質の異なるデータをどう融合させることができるかは,交通工学分野の今後の課題である.

A; 交通管制システムにおいては,ソフトウェアの更新周期を短縮することがITSを推進する上で重要と思われる.ハードウェアとしては少し古いシステム/機器であっても,ソフトウェアとして共存できるようなITS技術を考えることが重要であろう.

B; これはオブジェクト指向の導入によって解決の糸口があるのではないか.

(b) 交通情報の価値の評価,及び公開と活用に関わる諸課題に関する議論

B; 「インターモーダルな交通情報システム」の構築については,そもそもこれが本当に価値があることならば,民間がやれるはずであるし,民間主導が健全な方向であろう.

D; 民間の商売として考えると,交通情報を付加価値として,他の商品を売る手法が考えられる(ex.ある携帯電話会社と契約すれば交通情報が手に入る).このような情報に関する付加価値をつけて商品を売る手法は既にある(円メール)ex.10

F; 行政からの情報を一部の民間のみ無料公開すると公平性に問題が生じるのではないか.

C; 行政サービス経費のスリム化の観点から,公平な公開のためには,情報の有料化が必要と考えられ,行政への民活導入における一般的な考え方である.

B; (有料化せずに)無料公開することで,実質的に一部の民間会社が利益を上げるようになってしまったとしても,その波及効果,外部効果まで考慮すれば必ずしも社会的不公平にはならない,という解釈もありうるのではないか.

F; 有料/無料いずれの枠組みがどういう状況で正当とされ得るのか,このような評価検討をすることが重要であろう.

E; 天気予報のシステムでは多分,予報士へ行政手数料のような名目で情報が提供されているものと思われるが,参考になるであろう.

B; どういう情報を公共財とすべきで,どこからを民間とすべきか,その境界はどう考えるべきなのだろう.

A; 交通情報の社会的便益はどのように定量評価されるのか.また民間における交通情報の活用はどうあるべきなのだろうか.

F; 情報そのものがもつ個人の便益を直接測定することはできないだろうか.例えば「交通情報を得ることで精神的に満足する」という効果を調べてみることが考えられる.

(c) 広域交通・地方部におけるITSに関わる諸課題

D; 地方部では費用対効果を考えると,Beaconというインフラを整備することはあり得ないであろう.

A; 携帯電話利用双方向サービスのような安いシステムが考えられないか.

D; 都市部のような積み上げ式で費用対便益評価をすると,地方部/広域では対象人口の少なさや,厳しい自然条件など希な現象を対象とする情報ニーズであるため,そもそもシステムとして成立しないことになる.

B; 逆に地方部では,ITSによりこうしたリスクを回避することによる一人当たりの効果(ex.災害で普通の道路を知ってあらかじめ迂回する)は,非常に大きいはずである(単に時間価値の問題ではなく,時には生死にかかわる).情報の便益が都市部とは異なる.従って都市部の議論とは違ったITSによる効果の評価手法が必要となるであろう.

(第2回了)




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