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研究会の歩み

1. 交通工学研究会(任意団体)の設立まで
 わが国の道路整備事業は、昭和29年を初年度とする第1次道路整備5か年計画を契機としてようやく軌道に乗り始め、悪路のためその発展を妨げられていた道路交通も、これに伴い飛躍的な進展をはじめた。
 しかし、昭和30年代に入って道路交通の急激な増加による交通事故の多発、交通渋滞の発生を見るに至り、道路交通の安全と円滑を目的とする交通工学の研究と応用、普及等が急務であることが広く認識されるようになった。
 このような社会的要請のため、日本道路協会、高速道路調査会にそれぞれ設けられた交通工学的問題点を研究する委員会で、また交通警察関係においても全日本交通安全協会などで、多くの実際上の問題と取り組みながら交通工学的研究が着々と進められた。
 しかしながら,道路交通は道路構造,規制,制御,教育等幅広い分野にまたがることから,各方面の多くの関係者が、道路交通の安全と円滑とを図るためには多くの分野を総合的に取り扱う必要があること、また実際問題に直面して問題を解決するためには道路交通に関する基礎的な研究が必要であること、を痛感するようになった。
 本研究会を設立しようとする動きは、このような情勢を背景として生まれたものである。
 すなわち、昭和37年には道路関係の若手技術者数人が交通工学研究センター設立の構想を有志に呼びかけ、これが本会設立の芽となった。 昭和38年に至りこの動きは交通警察をはじめ多くの賛同者を得るようになり、会の性格,運営方針等について検討が行われるようになった。
 昭和39年前半には研究会の構想について一応の具体案ができ、同年9月15日に建設省,警察庁、公団、学界及び民間の指導的立場にある方々が参集して、本研究会設立について初めての討議を行なった。その後昭和40年前半にかけ10数回に及ぶ準備委員会において検討を行い、設立趣意書、会則、事業内容等の最終案が作成された。その間、日本道路協会、高速道路調査会及び全日本交通安全協会の3協会が本会の設立に賛同し、3協会合計100万円の基金が本会設立に際し拠出される旨約束された。
 本会の性格については、当面は任意団体として発足すること、事務局は当分の間、東京大学生産技術研究所内に置くこと、など具体的問題が逐次解決され、昭和40年9月には設立発起人名簿が作成された。
 昭和40年10月、設立発起人から本会設立に参加を要請する旨の文書が、翌11月には本会設立に関する趣意説明及び正会員加入勧誘状が広く関係方面に発送され、第1回の本会設立に関するアナウンスメントが行われた。 このアナウンスメントの反響は非常に大きく、多方面の方々から積極的な激励と入会申込みがあった。
 設立総会は、昭和41年1月14日に約100名の出席者を得て東京大学生産技術研究所で開催され,菊池明を初代会長とする会員400余名の交通工学研究会(任意団体)が誕生した。

2. 公益社団法人交通工学研究会の設立
 本会は昭和41年1月に任意団体として設立されて以来、交通工学に関する調査研究を中心に活動してきたが、昭和50年代に入り以下のような問題が次第に顕著になってきた。
 @ 事業規模が大きくなり社会的地位及び責任を明確にする必要がある
 A 任意団体のままでは,受託研究を受けにくい
 B 研究活動に関連する会員の依頼出張ができない場合がある
 これらの課題を解決し、本会の健全な運営を期すため、昭和53年5月の常務理事会で社団法人化を図ることを決定し、これを受けて、総務、経理、研究、事業、編集各委員会合同の事務局会議は、社団法人としての性格づけ、類似学協会との事業内容の区分、法人化後の組織・活動のあり方等を検討した。また、本会設立に際し賛助を受けた日本道路協会、高速道路調査会及び全日本交通安全協会の了解を得て、さらに昭和53年12月から翌年3月にかけての建設省および警察庁の審査を経て、昭和54年5月の第14回通常総会を社団法人交通工学研究会の設立総会とすることになった。
 昭和54年5月29日に開催された第14回通常総会は、「社団法人交通工学研究会設立のための発展的解散」と「解散に伴う全残余財産(差引正味資産9,390,924円)の社団法人交通工学研究会への寄附」を決議して、そのまま社団法人交通工学研究会設立総会へと移行した。設立総会は約600名の関係者、会員の出席を得て「設立決議」、「定款審議」および「役員選出」を行った。総会中の理事会において星埜和を公益社団法人交通工学研究会の初代会長に選出した。 
 設立総会終了後、役員の就任承諾書、設立総会議事録等すべての必要な書類をとり揃えて、昭和54年6月27日内閣総理大臣並びに建設大臣に設立許可申請書を提出し、同年7月24日付けの設立許可をうけてただちに社団法人としての設立登記の手続を行い、7月27日付けで登記を完了し、社団法人交通工学研究会は民法第34条による総理府・建設省共管の社団法人として新たな第一歩を踏み出すこととなった。

3. 一般社団法人交通工学研究会の設立
 政府は、民間非営利部門の活動の健全な発展を促進し民による公益の増進に寄与するとともに、主務官庁の裁量権に基づく許可の不明瞭性等の従来の公益法人制度の問題点を解決することを目的として、平成13年以降、公益法人制度の抜本的な改革に向けた取り組みを進め、平成18年の通常国会に関連3法案を提出、同年6月2日に公布された。交通工学研究会を含む従来の公益法人は、これらの法律が施行された平成20年12月から特例民法法人として移行期間に入り、5年間の移行期間の終了(平成25年11月)までに新法による公益法人か一般法人に移行することが義務付けられた。
 一方、平成20年1月から始まった第169国会(通称ガソリン国会)では、道路特定財源のためのガソリン税等の暫定税率に関する審議が中心となり、それに関連して道路関連公益法人の事業執行のあり方が大きく取り上げられた。政府は、他の分野の法人に先立って道路関係法人の改革の方向について検討を進め、平成20年4月17日付で「道路関係業務の執行のあり方本部最終報告書」を取りまとめた。
 この報告書において、当研究会は検討対象となった道路関係公益法人50法人の一つとして、平成22度までに一般法人へ移行することを要請された。一般法人になると、税制上の優遇措置は認められないが、主務官庁の許可等が不要となり、活動に関しても自由度が増すことになる。また、移行時点で保有している資産を、自ら設定した期間の中で公益目的事業に全て消費するための「公益目的支出計画」を策定・実施する必要がある。
 この政府の要請を受けて、平成20年5月の総会で一般社団法人への移行を目指すことを決定し、総務委員会に定款起草WGを立ち上げた。定款案は、数次の理事会での検討を経て、平成22年5月の総会で決議され、合わせて平成22年度中の移行完了を確認した。その後平成22年11月16日に内閣府に設立認可申請書を提出、内閣府等との協議を経て平成23年3月22日付で内閣総理大臣の認可書を受領、同年4月1日付で桑原雅夫を会長とする一般社団法人交通工学研究会が誕生した。
 新法人においても、産・学・官連携の下、交通インフラと交通運用のベストマッチを目指してノウハウを蓄積し、実社会に貢献する努力を続けていくことになる。



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 1996 社団法人 交通工学研究会